2016.12.22

経済エコシステム時代の”破壊的イノベーション”を、日本企業がリードするためには?

経済エコシステム時代の”破壊的イノベーション”を、日本企業がリードするためには?

近年、「破壊者」や「破壊的イノベーション」という言葉を耳にする機会が増えた。そして、それらは常に「破壊される側」の声として語られることが多い言葉でもある。例えば、携帯型音楽プレイヤーの機能はスマートフォンに代替されるようになったし、コンパクト・デジタルカメラや携帯型ゲーム機、電子書籍リーダー、電子辞書も同様に置き換えられつつある。街頭で盛んに配られていたクーポン付きのフリーペーパーは、インターネット上のクチコミサイトに押され、その多くが廃刊している。

ここで難しいのは、破壊される側が、破壊の始まるその瞬間まで、破壊の本質に気付かないということだ。2007年にiPhoneが発表されたとき、業界関係者や専門家の多くは、iPhoneの機能不足を指摘し、変わり種のニッチな製品でしかないと評していた。しかし、今やスマフォ普及率は世帯ベースで7割を超え、当時指摘されていた物理ボタンの少なさや、赤外線通信、ワンセグ、着うた、絵文字メール、おサイフケータイといった機能の多くも、今やスマフォによって高次補完・代替されているものばかりだ。

岡村 周実
岡村 周実事業戦略コンサルティング・グループ シニア・マネージング・コンサルタント

事業戦略コンサルティング・グループにて、日本企業・政府部門の成長戦略に係るコンサルティングを担当。先端テクノロジーや官民・異業種連携により、新たな産業の創生を図るプロジェクトを多数支援。慶應義塾大学卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 行政大学院 および パリ政治学院 公共政策大学院の修士課程修了。IBMのビジネスシンクタンクであるInstitute for Business ValueのJapanリーダー。

「価値」は実際に体験しなければ考察しようがない

実は、破壊的イノベーションについて議論するうえで最も重要なポイントは、製品・サービスが実装する「機能」云々の技術論ではなく、非線形的な「価値」創造の構想と戦略である。もちろん、そんなことは常識であって、わざわざ「実は」等という副詞句をつけて言及すべきものでもないのだが、現実的・実務的に最も忘れられがちなポイントであることも事実だろう。

非線形的な価値創造のシナリオという観点で、スマフォは数多ある事例の一つに過ぎない。現時点であれば、たとえばSharing EconomyやVirtual Reality、ドローン、Blockchain、IoT、AI/Analytics、Vendor Relationship Management、Crowd Funding/Sourcing、Wearable Technology、超小型衛星等のトレンド・ワードが経済誌を賑せている。もう少し視野を広げれば、YouTuberやポケモンGO等のエンタメ事例や、Social Impact Bond、休眠口座ファンドといった社会・行政事例もある。

問題は、それらの「価値」が非線形的であればあるほど、実際に体験しないことには、構想も戦略も議論不可能であるということだ。百聞は一見にしかずとは、まさにこのことで、上述の製品・サービスについては全てのビジネスパーソンに体験を促したい。というのも、価値を体験した上で議論しなければ、これらのトレンドが一過性のものなのか、継続的に主流となるものなのか判断が難しい。つまり、「価値」の議論ができないからである。鉄道と駅馬車の逸話のように、機能のスペック表を突き合わせて比較するのではなく、価値を実際に体験した上で、自社事業・顧客にとっての意味合いについて考察すべきだろう。

日本企業が「破壊力」を取り戻すために必要な3つの力学

日本企業が「破壊力」を取り戻し、世界における非線形的な価値創造を再びリードするために必要なアクションについて、レポート「創造と破壊の力学」では、破壊的イノベーションの創造に際して必要となる、価値の「構想力」と経済エコシステムの「合従力」、そしてイノベーションの「経営力」という3つの力学について論じている。

最初に、価値の「構想力」をいかに取り戻すかということについて、世界・日本企業の経営者・役員層の方々の視座・問題意識に基づき分析を行い、また幾つかの革新事例をもって提言を行っている。例えば、デザインシンキング等の発想法、プロトタイピング等の試行法、提供価値に応じた成果連動型ビジネスの計画法など、顧客価値を中心に据えた事業モデルへの変革方法は多岐に渡る。

次に、経済エコシステムの「合従力」である。非線形的な価値を構想し、実際に実現しようとする際、従来の業界やバリューチェーンを超えた新たな連携が必要となるケースは少なくない。新たな経済エコシステムの設計・連携・強化を促す「合従力」の獲得は、破壊的イノベーションの嵐が吹き荒れる時代において、企業の生き残りの条件となるだろう。

最後に、イノベーション創造を計画的・組織的に進めていくための「経営力」についても分析を行っている。イノベーション創造を推し進めるためには、通常の事業予算・計画プロセスではなく、その目的に即した経営・管理を行う必要がある。詳しくは、レポートの内容をご参照いただければ幸いである。