2016.10.28

グローバルなデジタルマーケティングへの挑戦―参画意識を醸成し、共通基盤を一気に導入―

パナソニック山口氏

グローバルでコンシューマ向け商品を展開する企業にとって、国や地域、言語の違いを越えて、最適な顧客体験を提供する仕組みづくりは、大きな課題となっています。統合され、一貫した顧客体験をグローバルに展開していくことと、各地域の市場環境を鑑みた独自性を、どのように両立したらよいのでしょうか。

より良い顧客体験の提供とグローバルにおけるブランド向上を目指し、73サイト、31の言語で展開しているコンシューマー向けWebサイトの一元化を実現した、パナソニックアプライアンス社同社海外マーケティング本部 デジタルマーケティング推進部 総括の山口耕平氏がデジタルマーケティングの取り組みについて語りました。

パナソニック株式会社 山口氏
山口 耕平(やまぐち こうへい)パナソニック株式会社 アプライアンス社 海外マーケティング本部 デジタルマーケティング推進部 総括

パナソニックにエンジニアとして入社。その後、海外営業、本社広報、国内マーケティング部門を経て2012年にグローバルWEB集中プロジェクトに参画。約1年半の短期間で、グローバル統一プラットフォームの構築とCMSを活用したグローバル集中オペレーションスキームを確立し、海外70を超えるコンシューマーサイトと集中オペレーションを実現、運用中。さらに、このグローバルサイトを核に、カスタマーエクスペリエンス向上を主眼に、ターゲティングやO2Oなどデジタルマーケティング戦略構築と展開を加速中。

パナソニックがマーケティングのデジタル化で取り組んだ3つの柱

パナソニックにおけるデジタルマーケティングの取り組みについて、Adobeと日本IBMが共催したセミナー「顧客体験でリードする、グローバル・デジタル・マーケティングの実践」に登壇した山口氏は、「2012年に取り組みはじめたときは、はるか彼方のゴールに向かい、何から始めたらよいかわからない状態だった」と振り返ります。

当時の心境は、「デジタルマーケティングって難しそう。どうしたら良いか分からず、正直困った」との事。まずは課題を明らかにし、一つずつクリアしようと、グローバルで展開するコンシューマー向けの商品サイト整備から着手することにしました。

パナソニックのグローバルのデジタルマーケティングの取り組みは、大きく以下の3つのフェーズに沿って進められました。

  1. 商品ページの質とスピード改善:グローバル統一CMSの導入
  2. 販売チャネルへの導線改善とリッチ化:コンテンツ活用による商品ページの「その先」の改善
  3. 「顧客」から「個客」へ:One to Oneマーケティングへの挑戦

パナソニック山口氏

「統一」と「集中」でCMSを見直し、グローバルで73サイトを革新

1つ目の取り組みが「商品ページの改善」です。同社がグローバルで調査したところ、顧客が商品を認知するきっかけとして、「Web経由」が60%〜70%にのぼることがわかりました。

デジタルマーケティングでは、あらゆる顧客接点において最適な顧客体験を提供することが求められています。特に顧客と企業を結ぶ第一のタッチポイントとなるWebサイトの改善は、重要度が高い大きなテーマです。しかし、以前のパナソニックのWebサイトは、それぞれの国や地域で別々のプラットフォームで個々に運用していたため、結果として、コンテンツやスピード、モバイル対応などが、バラバラな状態でした。

山口氏は「商品ページで商品の魅力、価値をお客様に伝えるために、コンテンツの質や量、さらに公開スピードに課題を感じていた」と話します。「日本では商品の発売、発表の際は、サイトに情報が掲載されるのが当たり前ですが、以前は、海外では、発表後も商品サイトに情報が掲載されないケースもしばしばありました。また、タイムリーに公開されたとしてもコンテンツがPOORだったり、情報量も十分でない、というケースも散見されました。さらに、モバイルサイトの対応も遅れていました。」

そこで、プラットフォームとオペレーションをグローバルで統合することに着手しました。具体的には、グローバルで統一されたコンテンツ管理システム(CMS)の導入と集中制作センターの設立です。

つまり、「グローバルなマーケティング戦略のもと、ローカルごとに最適化されたマーケティング活動を、統合されたプラットフォーム上で行う」という、グローバル化とグローカル化の両立がポイントとなったのです。

そのためのキーワードが、「統一」と「集中」。「統一」はグローバルCMSを導入し、リッチなコンテンツを世界中で活用することです。

そして、「集中」は、その運用を集中化すること。「どんなに良いツールも、運用がうまくいかなければ宝の持ち腐れ」と話す山口氏は、ローカル拠点での運用負荷を軽減し、継続した運用ができる仕組みが重要だと強調しました。

具体的には、「Webオペレーションセンター」(WOC)と呼ばれるCMSをオペレーションしWebページを制作するグローバル組織を設置。これにより、各国のマーケティング担当者が、いつ、どの商品のページを公開したいか、を「WOCに指示さえすれば、多言語対応で、マルチデバイスのページが出来るというスキームです。

パナソニック山口氏

ページ内の要素や項目などの構成、フォントサイズなどのルールをテンプレートとして規定し、WOCでは、そのテンプレート上に画像等のアセットを配置することでガバナンスとオペレーションの効率化の両立を図りました。

「ローカルのマーケティング戦略にフィットさせるためのコンテンツの入れ替えなどもフレキシブルに対応可能にしています」と山口氏は語ります。

上述したようなグローバル化とグローカル化の両立で重要なポイントとして、山口氏は「全員参画の意識」を挙げます。「日本本社の決定事項を各国に押し付けるだけでは、上手くいかないし、継続的な進化も難しくなると考えました」と山口氏が語るように、同社では各国とゴールを共有しコミュニケーションを活発にすることで参画意識を高める、このプロセスに腐心しました。

「目指すべき姿」をわかりやすく共有するために、コンセプトビデオを作成、その後は、海外のWeb責任者を集め、「全員参加」「みんなで納得」をモットーに、お互いの理解、役割と責任の明確化を深めていきました。

大事なことは「メリット」を共感することです。

グローバルCMS統一の第一目的は、リッチなコンテンツをグローバルに再活用することで顧客体験を向上させることですが、それ以外にも多々あります。例えば、コンテンツの利用率を高めること、すなわち同じようなコンテンツを各地でつくるより、一つのコンテンツをマルチユースする方がコストメリットが出ます。

こうしたコスト面でのメリットに加え、ネットワーク技術、セキュリティーなども、グローバルで一元的に導入することで、ローカルにメリットがあるということを理解してもらうことも心がけました。

山口氏は「せっかく作ったシステムも継続使用できなければ意味がありません。担当者がかわってもクオリティを担保できるように、プロセスを整備し、ローカルの意識を変えるところまで考えて取り組むことが大事」と述べました。

そして、「スピードを持って一気に導入すること」も重要なポイントの1つ。「時間をかけるほど失敗リスクは増えると考えた」と山口氏は語ります。同社では、展開導入に際し、如何に早く展開できるかを検討し、経験値を高めリスクをヘッジしながら展開する計画を策定しました。

具体的には、言語数、商品数など少ない国からスタートし、そこで得た経験を次に活かしていく、そして最後に、多くの商品ラインナップ、国数、多言語の欧州を仕上げる、と言う具合です

こうした導入展開戦略とその実行において、IBMのノウハウをもとにしたアドバイスが功を奏したと山口氏は語ります。「グローバル企業ならではの知見と、我々と同じ熱意で、短期間で導入を可能にしてくれた」。いい意味で「海外拠点の言いなりにならない」ファシリテーションの強みが発揮されたということです。

そして、同社が商品ページの改善の次に取り組んだのが「販売チャネルへ導線改善」です。これは、販売チャネルとの連携を強化し、商品ページからECサイト、リアル店舗への送客を強化するものです。

お客様は、オウンドメディアだけでなく、いわゆる量販店などのパートナーサイトにも訪問します商品ページと自社ECサイトとの連携強化だけでなく、パートナーサイトにおける自社商品ページでの顧客体験向上にも取り組んでいます。AEMで作成されたコンテンツを、半自動でパートナーサイトに連携させる施策なども加速させています。

グローバルサイトを中核に、さらなる顧客体験向上をめざしワンツーワンマーケティングに挑戦

そして、今パナソニックが取り組んでいるのが「カスタマーセントリックデジタルマーケティング(CCDM)」です。これは「顧客」から「個客」へ、その人にあったコミュニケーションを行うものです。ワンツーワンのポイント色々ありますが、先ず「パーソナライゼーション」と「タイムリー」に着目した施策を進めています。

パナソニック山口氏

1つ目は「Adobe Target」「Adobe Analytics」を用いた「ダイナミックホームページ(DHP)」です。これは、顧客のサイト内行動を分析し、Webサイトに表示するコンテンツを動的に変えるものです。

「今まではテレビであれ冷蔵庫であれ、別の商品を探しに来た人であっても、一律に同じ情報を表示していた」ものを、顧客のニーズに応じて最適化された情報を表示するように出すようパーソナライズを行いました。

2つ目は、「ダイナミックポップアップ(DPU)」です。これは、例えばテレビの商品ページに来訪した顧客に、キャンペーン情報などの「旬の情報」をポップアップで知らせるもので、「顧客の興味に応じたタイムリーな情報をお知らせする」施策で、各地域で成果をあげているようです

山口氏は、訪問者に最適な情報を提供し、顧客体験をさらに最適化するために、「お客様をもっと良く知り、お客様に心地よく感じてもらえるさりげない施策が重要になってくる」と熱く語ります。今後はDMP(Data Management Platform)なども活用した新しいチャレンジに注力されています。

「キーワードは、「right person」「right time」「right channel」「right contents」と語りました。そして、すべての顧客接点でより優れた顧客体験を提供することを目指したいと締めくくりました。


グローバル化とグローカル化を両立するためには、「統一」と「集中」により、「スピーディに一気に改革を進める」ことが欠かせないという提言は、顧客体験の最適化に取り組む多くの企業にとってヒントとなります。

グローバル化という意識はあるものの、具体的な第一歩をどう踏み出せばいいのか分からないという問題を抱えている多くの企業にとって、重要となるのが共に歩むパートナーの存在。お悩みの方は是非、下記IBMの取り組みをご覧ください。